mstdn.jpは過疎ることが使命のインスタンスである

自分の考えを徒然なるままに書いておこうと思います。
4月時点で以下の内容を考察・示唆していた先見性のある人も一定数いそうですが、私は使ってみるまで気がつきませんでした。

簡易目次
  • mstdn.jpは過疎ることが使命のインスタンスである
  • 私が最初期にやっていたこと
    • LTL中心のトゥート
    • mstdn.jpのアカウントからでしか利用できない連携アプリの作成
    • これらに共通する問題点
  • 分散型SNSユーザーの正しい在り方
    • 基本的にpublic投稿を使わず、unlisted(未収載)投稿を使う
    • ハッシュタグを有効活用する
    • できれば自分のインスタンスを持つ
    • リモートフォローを活用する
    • 究極の分散型SNSの理想のために
  • 別の視点から見た分散型SNSと今後
  • 分散型SNSとしてのマストドン

mstdn.jpは過疎ることが使命のインスタンスである

マストドンは分散型SNSです。しかし、ユーザー視点ではOStatusやActivityPubなどの規格を気にすることなく使用することができます。
分散型SNSでは、個々のユーザーが自分で自分のインスタンスを持つことが個人の発言の自由を担保するために重要なことであると言われています。1人につき1インスタンスが達成されれば究極的な分散化です。
つまり、単一のインスタンスにユーザーが集中することは中央集権的な動きであり、分散型SNSとして見たマストドンの在り方としては非常に許せない状態です。
中央集権的なSNSの代表であるTwitterは最近凍結基準等の運営方針に疑問を持ったり、UIの改変や広告やその他諸々不満を持っている人がいるようです。しかし、Twitterは分散の仕組みを有していないので基本的にどうにもできません。
mstdn.jpが分散型SNSを背負って立つ存在であると考えた場合、mstdn.jpの正しい在り方は、異常に高い人口密度を他インスタンスに分散させて是正することにあると考えることができます。

私が最初期にやっていたこと

LTL中心のトゥート

爆速のLTLを見て、適当にトゥートをLTLに流す。いわゆる空リプ。これの繰り返し。
ここで重要なことは、mstdn.jpを介して分散型SNSをやっていた……と言うには遠すぎる活動であったということ。
やっていたことは明らかにmstdn.jp下での中央集権的なチャット
もちろんただのチャットルームとは違って、boostやfavorite、follow等の機能はついている。しかしやっていたことはリアルタイム性をかなり重視したチャットに過ぎなかった。

mstdn.jpのアカウントからでしか利用できない連携アプリの作成

OAuthのノウハウ皆無の状態から適当に勉強して適当に作った某アプリ。
問題点は技術面含め大量にあったが、今回の論旨に沿ったこのアプリの問題点は、mstdn.jpのアカウントからでしか利用できなかったということ。
この理由の1つとして、そのアプリの内容が、ある1人の人物を発端としたmstdn.jp発のネタであり、その他のインスタンスで利用する価値が薄いと判断したため。
しかし、これは大きな間違いでした。ご存知の通り、マストドンにはリモートフォローという機能があり、インスタンスを跨いで各アカウントが連絡を取れる仕組みが備わっています。つまり、mstdn.jp以外にもその人物とネタを知っている人がいたはずです。
当時は大雑把に「コミュニティ = インスタンス」だと考えていました。これはLTLを中心にしていたからでもあります。しかし、分散化の理想形を考えれば、実際にはコミュニティはインスタンスの垣根を越えて存在するべきですし、インスタンスの垣根を越えて存在するコミュニティは守られるべきです。

これらに共通する問題点

LTL中心の活動や、特定のインスタンスからしか利用できない連携アプリに共通する問題点は、そのインスタンスの中央集権化を促しているということです。
mstdn.jpのLTLに自分のトゥートを流すにはmstdn.jpのアカウントを取らなければなりません。後者も然りです。
つまり、究極の分散化の実現のためには、あらゆるインスタンスは特権を持たず平等でなければならないはずです。

LTLという仕組みは各インスタンスが持つ特権の1つであり、これを利用するユーザーは究極の分散化思想に対する反逆者であると言えます。
独自機能を持つインスタンスの出現も分散化思想に対する反逆です。皆さんご存知の通り、mstdn.jpは基本的にバニラ(=追加機能無し)で維持していくと宣言されているインスタンスです。

私がやってきたことを改めて振り返ってみると、これらは明らかに分散化思想に対する反逆です。

分散型SNSユーザーの正しい在り方

基本的にpublic投稿を使わず、unlisted(未収載)投稿を使う

iOSアプリであるAmaroqはunlisted投稿がデフォルトになっています。
インスタンス特権的であるLTLの利用は分散化思想とは対極に位置しています。
魅力的なLTLを作ることは明らかに分散化思想に対する反逆です。

ハッシュタグを有効活用する

LTLに頼らずに魅力的なタイムラインを作るためにはどうすればよいか。それは#ハッシュタグ機能を使うことで解決できます。ただし、ハッシュタグはunlisted投稿では意味を為さないので、ハッシュタグを使う際はpublicで投稿します。
ある特定の話題についてトゥートする際に、その話題に関連するハッシュタグを付けることで、非常に魅力的なタイムラインを作ることができます。
この点においてもやはり「コミュニティ = インスタンス」という考え方は意味を為さないことが分かります。

自分のトゥートの投稿先をハッシュタグで選ぶ」という表現がしっくり来ると思われます。

できれば自分のインスタンスを持つ

言わずもがなではありますが。一応マストドンは分散型SNSの中ではサーバーが立てやすいサービスらしいです。
Mastodonの宣伝文句を以下に引用。
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  • 本当のコミュニケーションのために
    • 好きなように書ける500文字までの投稿や、文章やメディアの内容に警告をつけられる機能で、思い通りに自分自身を表現することができます。
  • あなたは人間であり、商品ではありません
    • Mastodon は営利的な SNS ではありません。広告や、データの収集・解析は無く、またユーザーの囲い込みもありません。
  • いつでも身近に
    • デベロッパーフレンドリーな API により実現された、iOS や Android、その他様々なプラットフォームのためのアプリでどこでも友人とやりとりできます。
  • より思いやりのある設計
    • 他の SNS の失敗から学び、Mastodon はソーシャルメディアが誤った使い方をされることの無いように倫理的な設計を目指しています。
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例えば自分の政治的思想と管理者の政治的思想が異なったとき、管理者が自分のアカウントを凍結するかもしれません。
分散型SNSにおいて、ユーザーは自由でなければならず、自分が所持するインスタンスは究極の自由が担保されています。そのサーバーの法律が許す限りで。

リモートフォローを活用する

どのインスタンスに所属しているかでユーザー体験に差が出てしまうという状況は分散型SNSに相応しくありません。
followの際はリモートフォローを使うことでインスタンスの垣根を越えてユーザーをフォローすることができ、これを克服できます。
自分がどのインスタンスに所属しているかに関心を持つこと自体が分散化思想に対する反逆です。
リモートフォローしていないアカウントとは事実上断絶状態であると言っても過言ではありません。気軽にフォローできるための仕組みとしてリスト機能が用意されています。

究極の分散型SNSの理想のために

上記のことを守るだけであなたは模範的な分散型SNSのユーザーになることができます。
また、インスタンス管理者はマストドンに機能を追加する際は独自実装を避け、本家にプルリクを投げるべきです。というか、ライセンスがAGPL v3なので、分散化を揺るがすような素晴らしい実装は本家にマージされていくと思われます。
本家にマージされなさそうなニッチな機能による差別化については別の視点も合わせて述べます。

別の視点から見た分散型SNSと今後

これまで話の前提として、分散型SNSは中央集権を忌避することに価値があるとしてきました。管理者が悪事を働く可能性というのは常に付きまとう問題であって、自分専用のインスタンスを持つに越したことはないことになります。

しかし、自分のドメインで自分のインスタンスを持ち、維持していくというのはコストのかかることであり、それ自体が趣味であったり仕事であったりしないとなかなか続けるのは難しいと考えます。
そこで、多数のユーザーは何者かが管理するインスタンスに所属するということを前提に考えると、分散型SNSはユーザーが各インスタンスに実際に分散したかしていないかに関わらず、その分散できる仕組みを持っていること自体に価値があると考えています。この意味で、アカウントのmigration機能は分散型SNSにとってマスト。ユーザーは自由を求めて移転する権利を有するべきであるはずです。

また、インスタンスの違いでユーザー体験が異なるべきではないのですが、それぞれのインスタンスが独自機能を実装しあって個性を持つというのも許容されるべきでしょう。仮にそれがユーザーのシェアを奪い合うことになってもAGPLライセンス下ではそれが発展につながると考えられるからです。

分散型SNSとしてのマストドン

分散型SNSの思想を重視しつつマストドンについて自分の考え方を述べてきましたが、ユーザーとしてマストドンの使用感というものを考えた時に、分散型SNSとしてのマストドンはまだまだ機能不足で使いづらいものであるという印象を改めて受けました。
これまで徹底して、「LTLの使用は分散型SNSへの反逆である」と表現してきましたが、ユーザー視点では、実際のところ、「LTLの使用者が多いという事実は分散型SNSの敗北である」と言ったほうが近いと思います。

現状、新規参入者がレールに乗るためには、大手インスタンスのLTLで自らの存在を示す必要があり、LTLを流れるトゥートを見てふぁぼやブースト、フォローをしまくったり、トゥートをしたりすることで、他のLTLを見ている人に自分の投稿を見てもらう必要があります。
つまり、以下の前提が成立していなければなりません。そして、これは明らかに分散型SNSの理想とは程遠い形態です。
  • 大手インスタンスに所属している
  • そのインスタンスにいる他ユーザーもLTLを見ている or LTLに投稿している
これが非常に高い水準で満たされていたのが最初期のmstdn.jpであったと考えています。
もちろん、インスタンスが大手でなくても、リモート経由で他のアカウントにアクションを取って自分の存在を示せば良いのですが、LTL経由に比べるとハードルが高いと考えます。
また、先ほどunlistedでの投稿を提案しましたが、unlisted投稿の問題点もここに集約されます。未収載でもやっていけるというのは既にある程度認知度がなければできないことで、マストドン新規参入者が未収載で投稿しても恐らく誰からもアクションを貰えないだろうという問題点があります。
更に、LTLを主体にコミュニケーションを取る人が多くいるインスタンスでは、LTLを見ずに投稿されたトゥートはノイズと見做される恐れがあります。普段unlisted投稿をしていても、ハッシュタグを機能させるためにはpublicで投稿しなければならず、仮にハッシュタグてんこ盛りのトゥートがLTLを流れるとしたら、それを快く思わない人は少なくないと考えます。

分散型SNSとしてのマストドンは、中央集権的であるLTLの非中央集権的な代替が求められています。ハッシュタグ機能等、LTLの代替となるポテンシャルを持つ機能は実装されていますが、あくまでも思想としての代替に過ぎず、ユーザビリティを考慮すると厳しいのが現状だと考えます。
このあたりを補強する機能実装がされたとき、mstdn.jpは過疎への第一歩を歩めるのではないかと考えています。

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